善逸から甘い匂いがした。
どうやら考え込んでいるのか、俺のことには気づいていない。けれど、この匂いがどんな感情から来るものかは知っている。
──これは好意、しかも友情ではないものだ。
これまでも何度かこの香りは感じていた。けれど、こんなにも、はっきりと嗅いだのははじめてだ。
期待しても、いいのだろうか。
この気持ちの向く先に、誰がいるのかを。
「なにかあったのか? 善逸?」
そう声をかけてみれば、善逸は驚きの表情で振り返る。匂いだけじゃない、表情も、気配も、その全てが俺に期待を抱かせるばかりだ。
どうしても答えが知りたくて、まっすぐ善逸のことを見つめた。
「うん、まぁな……」
雄弁に感情を伝える匂いに反して誤魔化す言葉を口にする善逸のことが、どうしようもなく愛おしい。
善逸のことが好きだ、改めてそう思った。
