後天性にょたぜん(tnzn)

「なんだこれー!」
 間の抜けた絶叫がこだまする。紛うことなき善逸の叫びに、炭治郎は匂いを追っていの一番に駆けつけた。
「どうしたんだ! 善逸……!?」
 閉ざされていた扉を開け放ちながら、炭治郎は呼びかける。そこには両胸に手を当てて、絶叫の次に言葉を失った善逸の姿があった。
「たんじろ……どうしよ……何か、半端に胸があるんだけど……」
 善逸の言葉の意味をはかりかねて、思わず首を傾げる。
 〝胸がある〟の言葉が何を指しているのかがわからない。胸はあるのだ、当たり前にそこにある。それは問題ではないはずだった。それの何に問題があるの言うのか。
 長考の姿勢に入ってしまった炭治郎の肩を掴んで、善逸は容赦なく揺さぶる。心無しかいつもより力が弱いような気がした。
「やめろよォ! 無言は怖いんだよ!」
 涙ぐみながら訴えかけてくる善逸の瞳は相変わらず大きなものだが、何故かいつにもまして色香を感じる。しかしその感覚を首を横に振って振り払った。冗談ではなく困っている友に対して、それは失礼だと思ったからだ。
「どうしたのか、ちゃんと説明してくれ」
 炭治郎の言葉に、涙を拭いながら善逸は大きく深呼吸をする。少し落ち着いてきたらしかった。
「……よく分からないけど、俺、女の子になっちゃったみたい」
 理解の範疇の外まで飛び出してしまっている言葉に、炭治郎は完全に固まる。許容範囲を大幅に超えてしまっていた。